Take.5 イミテーション・ゲーム
天才数学者の大いなる偉業。70年の時を経て公開された真実の物語。
出典:https://blog.goo.ne.jp/nryoko1220/e/e88942e95b29a1274fc69d71d206c3d0
この映画は、第二次世界大戦下における、イギリスVSドイツに起こる真実の戦いを描いた、2014年公開のノンフィクション映画である。
イギリスが誇る天才数学者アラン・チューリング。
彼に命じられたものは、WW2における世界最高峰の暗号機“エニグマ”を解読すること。
そんな彼の半生を描いた素晴らしすぎるヒューマンドラマである。
キャストは、イギリス出身俳優が多く、
アラン・チューリング:ベネディクト・カンバーバッチ(ドクターストレンジなど)
ジョーン・クラーク:キーラ・ナイトレイ(パイレーツ・オブ・カリビアンなど)
スチュアート・ミンギス:マーク・ストロング(キングスマンなど)
などの面々である。
特に今作は、第87回アカデミー賞8部門にノミネートされており、当時から話題の映画となっていた。
これも観たかった積み映画の一つであったが、現在プライム会員無料映画なため、タイミング良く消化できた。本当におすすめの作品です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今作の見所と、心を揺らす名言が二つ。
やはり見所としては、「天才の孤独」と「同性愛者としての葛藤」を演じきった、カンバーバッチの演技であろう。
自身が天才的な思考をもち、周りに理解者ができない彼は、自身の殻に閉じこもり、自分一人でエニグマを解読しようとするが、いくら理論上正しいことをしていても、徐々に周りに追い詰められていく。
端々に観られる「君にはわからない」「話しても理解できない」などの言葉は、彼の天才過ぎるがゆえの無意識の拒絶なのだろう。
しかし、同じく数学の秀才ジョーン・クラークは、解読班の一員として彼の理解者となる。そのことがエニグマ解読へのヒントを閃くきっかけを生み出す。
また彼は中盤、自身が同性愛者であることを告げるが、序盤からその雰囲気が出ており、観ている者に、少しの違和感を残すような演技をしていた。
史実のチューリングもまたLGBTのいわゆるゲイに当てはまる人物であり、当時のイギリスだけでなく、世界的に差別が当たり前の時代だった中で、自身の葛藤を表現するシーンがいくつも出てくる。
作終盤、当時のイギリスでの同性愛者への罰として、
「投獄」もしくは「ホルモン注射」という、現在では考えられない差別的手法が取られていた中で、彼は、自身の設計・開発を行ったチューリングマシンを守るために、ホルモン注射という過酷な道を選択したのである。
この孤独と葛藤に悩むチューリングを救い、映画史に残る最高の名言を2つ紹介したい。
「時として誰も想像しない人物が、誰も想像できない偉業を成し遂げる」
これほど、当時のチューリングを救う言葉はあっただろうかというくらい最高の名言である。
学生時代から頭脳明晰だったチューリングは、「変わり者」「異質」とされ、周りから暴力的ないじめを受けていた。
その中で、唯一彼を理解してくれるクリストファーが、チューリングを励ますために送った言葉である。
作中幾度も出てくるキーワードであるが、この作品が伝えたいことが全て詰まっているかのような名言だ。
「あなたが普通じゃないから世界はこんなに素晴らしい」
作終盤、同性愛者であるがゆえに、ホルモン注射の強制投与を行われ、
「自身が普通ではないからへの仕打ち」と考えてしまったチューリングに対し、
普通の幸せな暮らしを得たジョーン・クラークが話す名言。
「今朝私は、消滅したかもしれない街の電車に乗った。あなたが救った街よ。
死んでいたかもしれない男から切符を買った。あなたが救った人よ。」
なんとも心を揺らす名言だろうか。
時のWW2、全世界で数え切れないほどの犠牲者を出した戦争。
「戦争終結を2年以上早めただろう」「1400万人以上の命を救った」
とされている。
この後、1954年、41歳の彼は自殺という形でこの世を去ってしまうが、
エリザベス女王は、2013年、チューリングに対し「死後恩赦」を与え、
前例のない偉業に対し栄誉を送った。
素晴らしい。この一言に尽きる。
現在の当たり前が、当たり前になる前を築き上げてくれたチューリング。
ちなみに作中に出てくる「チューリングマシーン」とは、現代のコンピュータの基礎となるものであり、今、私たちの生活の一部として、チューリングの成し遂げた偉業が普及している。
是非観ることをおすすめする作品の一つです。